AE86 リビルトミッション
調子の悪いAE86のトランスミッションでは、シフトアップ操作で
ガリガリ音がする、シフトダウンで2速に入らない、もしくはシフトダウンでガリガリ音がする、2速から3速へのシフトアップ時にガリガリ音がして3速に入りにくい、リバースギヤになかなか入ってくれない、等の症状が多い様です。
ミッション不調の原因は、過走行によるシンクロやハブスリーブ、
またはベアリングの消耗による不調はもちろんですが、その他の原因として、オイル管理の悪さ・粗悪なギヤオイルでのサーキット走行やスポーツ走行・クラッチトラブルによる各ギヤへの負担・ドライバーによる荒いシフト操作 などがあげられます。
トランスミッションの変速操作は、クラッチシステムの状態が大きく関わってくるため、調子が悪いからと、安易にミッションを交換するのではなく、まずは、クラッチマスターシリンダやクラッチレリーズシリンダからのフルード漏れを点検し、クラッチ本体の切れに異常がないことを確認してから、 リビルトミッションへの載せ替えや、ミッションO/Hを検討した方が 確実な修理が可能となります。
また、クラッチ本体が滑っている場合は、リビルトミッションに交換する際に、同時にクラッチ交換を行えば、ミッション脱着工賃が1回で済み、工賃がお得になります。
リビルトミッション 載せ替え前に確認する事
クラッチマスターシリンダの点検
クラッチペダルの操作で油圧がかかり、ミッション側に取付いているクラッチレリーズシリンダへクラッチフルードを送ります。
ここからクラッチフルードが漏れると、クラッチレリーズシリンダへの油圧がかからず、クラッチをしっかりと切る事が出来なくなってしまうので、クラッチの切れ不良がおき、ギヤがまったく入らないトラブルや、シフトチェンジのたびにガリガリ音がする、などの症状が発生します。
また、クラッチフルードが漏れて、ボディに付着したままになると、
塗装面を剥がしてしまうため、ボディに錆が発生し、錆が広まってしまうので注意が必要です。
クラッチレリーズシリンダの点検
クラッチレリーズシリンダはトランスミッション本体にボルト止めされている部品です。
クラッチマスターシリンダからの油圧を受けて作動し、レリーズフォークを押し込んで、クラッチレリーズベアリングをクラッチ
カバーのダイヤフラムスプリングに押し付けます。
クラッチマスターシリンダと同様にクラッチレリーズシリンダから
フルード漏れがあると、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングを押す力が弱まり、クラッチの切れ不良となりますので、シフト操作の度に、ミッションにダメージを与える事になります。
ミッションマウントの点検
ミッションマウントの亀裂などが原因で、トランスミッション本体が振動してしまうため、コーナリング中でのシフト操作でギヤが入りにくくなる事もあります。
ミッションマウントのゴムは切れていることが多いので、強化ミッションマウントに交換することをオススメします。
AE86 T50 リビルトミッション作業過程
フロントハウジングとリヤエクステンションを取外して、ミッションケースのボルトを緩め、ミッションケースを取外します。
ミッションケースには、黒く汚れたミッションオイルがこびり付き、
細かな鉄粉のカスが付着していました。
ミッションケースからシャフトを取外す前に、インプットシャフトを手で回して、各ギヤなどに破損がないかを点検しておきます。
点検後に、メインシャフトとカウンタシャフトをケースから取外し、
各部品を分解していきます。
ミッションケースから取外したメインシャフトを分解した状態です。
メインシャフトを分解して、各部品の状態を確認します。
シンクロナイザーリングとハブスリーブ その他、シンクロキーや
ベアリングなどは消耗品なので、全て交換しますが、各ギヤ本体と
ハブは、状態を確認して問題が無ければ再使用します。
ギヤ本体の破損や、ギヤ本体のスリーブ噛合い部の状態、ハブ内側のスプライン破損などがないかを入念に点検してから作業を進めていきます。
取外した1速ギヤを洗浄して、状態を確認します。
1速ギヤ本体に異常は見当たらず、ハブスリーブと噛合う部分の山の消耗も非常に少なく、状態が良いので、そのまま組みつけて再使用可能です。
2速ギヤとシンクロナイザーリングです。
2速ギヤに、ギヤ欠けや破損した様子はないのですが、ハブスリーブと噛合う山の先端部分が消耗して丸みをおびた状態になっています。
この状態のままで2速ギヤを再使用すると、2速へのシフト操作が
スムーズにいかないので、2速ギヤを新品に交換するか、丸くなってしまった部分を加工して使用する事になります。
シンクロナイザーリングのハブスリーブとの当たり面は、消耗が激しく、先端の角が無くなっている状態なので、新品へ交換が必要です。
1速ー2速ハブスリーブの2速ギヤ側とキーです。
ハブスリーブのギヤ噛合い部先端は消耗が激しく、角がなくなり丸く
なってしまっているので新品に交換します。
ハブスリーブは、シフトフォークに連結されていて、ドライバーによるシフトレバーの操作がシフトフォークを介して、シフトするギヤの方向へスライドし、キーとシンクロナイザーリングで回転を同調させながらギヤ本体へ噛合います。
2速ギヤと2速シンクロナイザーリングの消耗も激しかったことから、2速へのシフトアップまたはシフトダウンの荒い操作が多かった事がわかります。
取外した3速ギヤとシンクロナイザーリングです。
3速ギヤのハブスリーブとの噛合い部は、かなり消耗していました。山の部分が削れて角が無くなり丸くなっている状態です。
このまま再使用しても、3速へのシフトチェンジはスムーズに出来ないので、3速ギヤを新品に交換するか、加工して使用する事になります。
シンクロナイザーリングも消耗が激しく、数箇所は角が完全に無くなり平坦な状態になっていました。
荒いシフト操作や、粗悪なミッションオイルでのスポーツ走行、または、クラッチ切れ不良のままでの走行などが原因で、ギヤ本体も、かなり消耗してしまいます。
取外した4速ギヤ。4速ギヤはインプットシャフトと一体になっています。
ハブスリーブと噛合う部分は、かなり良い状態で、角がしっかりと残っていました。
シンクロナイザーリングを新品に交換して再使用出来そうです。
3速ー4速ハブスリーブの3速側です。
3速ギヤと噛合う先端部分の角が無くなり、丸くなってしまっている状態でした。ここまで消耗が進んだ状態だと、3速へのシフト操作が
うまくいかず、シフトするたびにガリガリ音がしたり、回転数を合わせないとギヤが入らないなどの症状が発生します。
2速・3速ギヤ本体と3速シンクロナイザーリングの消耗具合からみても、今回バラしたミッションは、2速から3速へのシフトアップと
3速から2速へのシフトダウンを多様していた事が予想されます。
取外した5速ギヤとシンクロナイザーリングです。
5速ギヤは状態が良く、ハブスリーブとの噛合い部分は角がしっかり残っていて、そのまま再使用できそうです。
シンクロナイザーリングの消耗は少なく、角がしっかり残っていて、
きれいな状態でした。
4速と5速は、酷使されてなかったようです。
リバースギヤと5速ーRハブスリーブのリバース側です。
ハブスリーブのリバースギヤ側がひどく消耗していて角がなくなっており、丸くなってしまっています。リバースギヤ本体のハブスリーブ
噛合い部分も消耗し丸くなってしまっているので、ギヤを新品に交換もしくは加工が必要となります。
AE86のリバースギヤにはシンクロナイザーリングが使用されていませんので、リバースギヤへシフト操作を行う度に、ハブスリーブが
直接リバースギヤへ噛合います。
そのため、ハブスリーブ先端の消耗が激しく、無理なシフト操作を続けているとリバースギヤ本体側も消耗していきますので、リバースへシフトするたびにガリガリ音がしたり、リバースへシフトが入ってくれない等の症状が発生します。
ハブスリーブと噛合う部分の状態が悪く、消耗が激しかった
2速ギヤ・3速ギヤ・リバースギヤは、新品に交換するのがベストですが、生産中止で部品が入手出来なくなってしまいました。
ハブスリーブとシンクロナイザーリングを新品に交換しても、ギヤ側の噛合い部分が消耗し丸くなっている状態だと、スムーズなシフト操作が出来ないだけでなく、新品ハブスリーブの消耗が早まってしまいます。
そのため、ギヤ側の消耗して丸くなってしまった部分を削り、鋭角になるように整えます。この加工を行うことで、ハブスリーブがシンクロナイザーリングを押して回転を同調させた後、スムーズにギヤ本体までスライドし噛合うようになるので、調子の悪かったシフト操作がスコスコ入るようになります。
加工した2速ギヤに新品シンクロナイザーリングを取付て、メインシャフトに組付けます。
1速ー2速ハブスリーブと1速・2速のシンクロナイザーリングを新品に交換して組付けていきます。
各ギヤのシンクロナイザーリングとハブスリーブは必ず新品部品を
組付けます。
1速ー2速のキーも消耗していたので新品に交換しました。
キーは、ハブの3箇所の溝に取付くパーツで、両端はシンクロナイザーリングの溝に収まっています。
シフト操作でハブスリーブがスライドし始めると、ハブスリーブ内側で接触しているキーが先にシンクロナイザーリングを押し付ける事で
回転の同調が始まり、ハブスリーブとギヤがシンクロナイザーリングを介して噛合います。
1-2速のハブとハブスリーブを圧入して、1速ギヤを取付ます。
1速ギヤの横に取付けるメインシャフトのセンターベアリングは新品に交換して圧入します。
ここのベアリングは、ガタがでてくる事が多いので必ず新品に交換して組付けます。
メインシャフトのセンターベアリングを圧入後には、1速ギヤと
2速ギヤを回してみて、スムーズに回転することを確認します。
また、ハブスリーブをスライドさせて、1速ギヤと2速ギヤ それぞれに、しっかりと噛合う事を確認します。
リバースギヤをメインシャフトに組付けて、5-Rの新品ハブスリーブをハブに組付けます。
取外したハブスリーブのリバースギヤ側は、消耗が激しくスリーブ先端の角が無くなり丸くなっています。新品ハブスリーブと比べると、
かなり痛んでいるのがわかります。
5-Rのハブに新品のキーを組みつけて、ハブスリーブと共に、メインシャフトへ圧入し、新品シンクロナイザーリングを組付けた5速ギヤをメインシャフトへ取付けます。
5速ギヤのリヤ側にはメインシャフトリヤベアリングが取付きます。
取外したリヤベアリングに異常ははありませんでしたが、いづれガタついてくると異音がでてきますので新品ベアリングを圧入しました。
リヤベアリングを圧入したら、5速ギヤとリバースギヤを手で回し、
スムーズに回転するか確認します。
ハブスリーブも手でスライドさせてみて、5速ギヤとリバースギヤに
しっかりとシフトするか確認します。
メインシャフトのリヤ側には、スピードメーターのドライブギヤが
取付き、Cリングで固定されています。
スピードメータードライブギヤは、スピードメーターを作動させるためのギヤで、ミッション外側に取付くスピードメータードリブンギヤに回転を伝え、ドリブンギヤの回転はスピードメーターケーブルでメーター裏側までいき、メーターユニットへ直接回転を伝えています。
加工した3速ギヤに新品のシンクロナイザーリングを取付けて、メインシャフトへ組付けます。
AE86の3速ギヤにはベアリングが無いため、ギヤ内側はメインシャフトと直接擦れ合う構造になっていますので、ギヤの内側へはミッションオイルをたっぷり塗りつけてからメインシャフトに組付けます。
消耗の激しかった3-4速のハブスリーブも新品部品に交換します。
取外したハブスリーブと新品のハブスリーブを比べると、スリーブ先端が消耗して丸くなっているのがわかります。
3-4速キーも新品に交換し、ハブに取付け、ハブスリーブをセットしてメインシャフトに圧入します。
3-4速 ハブとハブスリーブを圧入して、Cリングを取付けると、
メインシャフトへの組付け作業は完成となります。
3-4速ハブの片側には4速ギヤが取付きますが、4速ギヤはインプットシャフトと一体式なため、インプットシャフトASSYが
ベアリングを介して、メインシャフト先端に取付くことになります。
4速ギヤが一体となっているインプットシャフトASSYです。
インプットシャフトのベアリングも古くなるとガタが発生しますので新品ベアリングに交換します。
シャフトに切られたスプラインはクラッチディスクが取付く部分で、
シャフト先端は、エンジンのクランクシャフトリヤ側に取付いている
パイロットベアリングに差し込まれて支持されています。
4速ギヤ内側には、小さなニードルローラが12個並んで取付き、
4速のニードルローラベアリングとなっています。
ここのベアリングも古くなるとガタついてきますので新品に交換して
組付けます。
4速ギヤの内側にグリスを塗りつけてニードルローラを1個づつ
並べて組付けます。
ニードルローラベアリングを組付後に、メインシャフト先端に差込ますが、ドライスタート防止のため、ベアリングにはミッションオイルをたっぷりと塗りつけてからメインシャフトへ差込ます。
インプットシャフトASSYをメインシャフトに取付け、4速ギヤがスムーズに回る事を確認します。
メインシャフトのオーバーホールが終わると、ミッションケースに取り付けますが、ケースに取付る前に、組付けた各ギヤとベアリングを回してみて異常がないか確認します。
次に、カウンタシャフトを分解します。
カウンタシャフトはメインシャフトに比べ取付く部品点数が少なく、
各カウンタギヤとベアリングで構成されています。
分解できるギヤは、5速カウンタギヤとリバースカウンタギヤのみで、その他のカウンタギヤはカウンタシャフトと一体式となっています。そのため、5速とリバース以外のギヤブローの場合は、カウンタシャフト本体の交換となってしまいます。
分解した各部品を洗浄し、キズやクラックがないか確認します。
カウンタシャフト本体と各カウンタギヤに異常が無いことを確認し、
ベアリングを新品に交換して組付けます。
カウンタシャフトの組付けが完成したら、ベアリングにミッションオイルを塗布し、手で回してオイルを馴染ませ、ベアリングに異常がないかを確認します。
オーバーホール後のメインシャフトとカウンタシャフトをミッションケースに取付ます。
各ギヤの当たり面と、ハブスリーブとシフトフォークの接触面には
ミッションオイルをたっぷりと塗りつけて、ドライスタートを防止します。
また、インプットシャフトを手で回し、ニュートラル状態の各ギヤがスムーズに回る事を確認します。
ミッションケースを閉じる前には、各ギヤへシフトをして、しっかり
シフト操作が行えるかの最終確認をします。
シフトフォークを手で動かして、ハブスリーブを1速ギヤへスライド
させ、ハブスリーブと1速ギヤがスムーズに噛合う事を確認します。
1速ギヤから2速ギヤ側へシフトフォークを操作し、ハブスリーブを
スライドさせて、2速ギヤへスムーズに噛合う事を確認します。
1-2速のハブスリーブをニュートラル状態へ戻し、3-4速のシフトフォークをスライドさせて3速ギヤへシフトし、スムーズに噛合う事を確認します。
3速ギヤから4速ギヤ側へシフトフォークを操作し、4速ギヤへハブスリーブがスムーズに噛合う事を確認します。
AE86のT50ミッションでは、4速が直結となりますので、
減速比は1となり、インプットシャフトに入力された回転数が、
そのままアウトプットシャフトの回転数となります。
3-4速のハブスリーブをニュートラル状態に戻し、5-Rシフトフォークを5速ギヤ側へスライドさせて、ハブスリーブが5速ギヤへスムーズに噛合う事を確認します。
AE86の5速はオーバートップギヤとなりますので、インプットシャフトに入力された回転数よりも増速されて、アウトプットシャフトへ伝わります。
5-Rシフトフォークを操作してハブスリーブをスライドさせ、
リバースギヤへシフトし、スムーズに噛合う事を確認します。
AE86のリバースギヤには、シンクロナイザーリングが無いため、
ハブスリーブが直接リバースギヤへ噛合う構造になっています。
各ギヤへのシフト操作点検後にミッションケースのフタを閉じます。
ミッションケースに液体ガスケットを塗りつけて、ボルトを均等に
締め付けます。
ミッションケースのボルト締め付け後には、インプットシャフトを手で回してみて、スムーズに回る事を確認します。
プロペラシャフトが刺さる部分のミッションリヤシールは新品に交換しておきます。
ミッションリヤシールを新品に交換したリヤエクステンションは新品ガスケットを介してミッションケースに組付けます。
インプットシャフトシールも新品に交換します。
ここのオイルシールからミッションオイルが漏れてくると、フロントハウジングにミッションオイルが飛び散り、クラッチにミッションオイルが付着してしまいます。
フロントハウジングは新品ガスケットを介してミッションケースに
組付けます。
リビルトミッション完成後には、シフトレバーを仮止めして操作し、
シフト操作の最終確認を行います。
AE86 T50 リビルトミッション販売価格
ミッション下取有り ¥336000(税抜き)
ミッション下取無し ¥398000(税抜き)