エンジン1
AW11 MR2 エンジンオーバーホール
AW11 MR2 NAの4AGです。
エンジンオイルの漏れが酷く、タイミングベルトも交換時期だったので、エンジンをオーバーホールする事になりました。
ミッションや、その他パーツを外して、エンジンを車両から取外します。
ミッドシップは作業性が悪いため、FRやFFに比べて手間がかかります。
フロント側のエンジンマウントです。
取外してみると、ゴムが切れていましたので、エンジンをのせる際には交換が必要となります。
取外したスパークプラグ。
プラグ先端の電極は消耗し減っていて、エンジンオイルが大量に付着していました。
プラグ側面には、錆が発生し広がっている状態でした。
かなり長い期間、スパークプラグを交換してなかったようです。
取外したカムカバー。
カムカバー裏側は、オイル管理が悪かったようで、エンジンオイルのカスがヘドロのようにこびり付いていました。
シリンダヘッドのカムシャフトが取付く部分です。
カムカバー同様に、エンジンオイルがこびり付いていて、ヘドロのように溜っていました。
取外したシリンダヘッド。
1番の燃焼室にはエンジンオイルの付着が特に多かったので、バルブステムシールからのオイル下がり、または、ピストンリングからのオイル上がりが発生していたようです。
また、エキゾーストバルブの表面には、白く焼けたすすがこびり付いていました。 フューエルフィルターの詰まりや、フューエルポンプの能力低下などが原因で、燃料が薄い状態で走行していたようです。
1番ピストンのバルブリセス部分には、燃焼室に入ってきたエンジンオイルが溜っている状態でした。
また、ヘッドガスケットの腐食が進んでいて、錆とガスケットのカスが冷却水の通る水穴を塞いでしまっていました。
ヘッドガスケットの4番シリンダー側は破損しかけていました。
破損したヘッドガスケットの欠片がピストン頭部とシリンダーの間に挟まっています。
オイルパンを取外すと、オイルストレーナー表面には汚れが付着し、堆積していました。
これだけの汚れが詰まっている状態だと、オイルパンからくみ上げるオイル量が減ってしまい、メタルトラブルなど、異音の原因になりかねません。
クランクシャフトを取外す前に、クランクの曲がりを測定します。
かなり汚れてはいましたが、曲がり量は基準値内におさまっていて、ジャーナル部分にも大きな傷はでてないので、洗浄して再使用できそうです。
取外したピストン コンロッド クランクシャフト。
汚れた状態だと、小さなキズやクラックを見落としてしまうため、洗浄後に各部品を点検します。
シリンダヘッドに堆積していた汚れと、バルブに付着したカーボンスラッジをきれいに洗浄して、バルブの摺り合せをおこないます。
また、ヘッドの歪み量は基準値内におさまっていましたが、ヘッドガスケットの破損による細かいキズが残ってしまっていたので、ヘッド面研を行うことにしました。
バルブの摺り合せ後には、各バルブとシートリングの当たりを目視で確認します。
バルブコンパウンドをきれいに洗浄して、バルブを取付けます。
この状態で、30分ほど放置し、液がもれてこなければ、バルブとシートリングがしっかりと当たり密着していますので、バルブからの圧縮漏れを防ぐ事ができます。
洗浄したエンジンブロックに、新品のクランクメタルを組付けます。
クランクキャップにも新品メタルを組付け、クランクキャップボルトを規定トルクで締め付けます。
ボルト締付け後には、クランクシャフトを手で回し、軽くスムーズに回転することを確認します。
洗浄したピストンとコンロッド。
ピストンとコンロッドに大きな傷やクラックは無く、再使用が可能な状態でした。
ピストンリングを新品に交換してシリンダーに組付けます。
コンロッドメタルも全て新品に交換します。
各シリンダーにピストンを組付けてコンロッドキャップを規定トルクで締付けます。
ブロックのデッキ面は基準値以上に歪んでいたので、研磨して修正しています。
オイルポンプを分解して洗浄します。
洗浄後は、トロコイドへエンジンオイルをたっぷりと塗りつけてから組付けます。
また、高回転での油圧低下を防ぐため、リリーフバルブのピストンにはシムを入れておきました。
クランクシャフトのリヤシールを新品に交換。
ここのオイルシールからエンジンオイルが漏れてくると、ミッションのクラッチハウジング内に、漏れたオイルが溜ってきますので、フライホイルやクラッチに漏れたオイルが付着すると、クラッチが滑る原因となってしまいます。
クランクシャフトのフロントシールを新品に交換して、オイルポンプをエンジンブロックに取付けます。
クランクシャフトの先端に嵌るクランクキーも新品に交換しました。
クランクシャフトのリヤリテーナーを新品ガスケットを介して取付けます。
この時点で、クランクシャフトを回転させてみて、オイルシールに不具合などがないことや、クランクシャフトがスムーズに回る事を確認します。
クランクシャフトやピストンの動きに異常がないことを確認したら、オイルストレーナーを組付けて、オイルパンを取付けます。
オイルパン取付けボルトは錆が酷かったので、新品ボルトに交換しました。
ウォーターポンプ取付け。
ウォーターポンプは、古くなってくると冷却水が漏れてきますので、新品を取り付けます。
面研後のシリンダヘッドです。
新品のバルブステムシールを組付けて、バルブを取付けます。
エンジンブロックのデッキ面に付着したオイルをきれいに脱脂してから、メタルヘッドガスケットをセットし、シリンダヘッドをのせる準備をします。
リフト量の大きなカムシャフトを組む場合などでは、各ピストンの位置をシリンダーの中央付近に揃えておくことで、カムシャフト組付時の、バルブとピストンの干渉を防止することができます。
シリンダヘッドボルトは、一度締付けると伸びてしまうので、新品ボルトに交換してヘッドを取付けます。
4AGでは、短いボルトがインテーク側で、長い方がエキゾースト側となります。
ノックピンの位置に注意して、シリンダヘッドをブロックに載せてヘッドボルトを仮止めします。
新品のシリンダヘッドボルトには、エンジンオイルを塗付してから規定トルクで締め付けます。
ミッドシップのAW11では、作業性が悪いため、サーモスタットを交換するのも手間がかかってしまいます。
エンジンオーバーホールのついでに、サーモスタットやサーモハウジングにつながるウォーターホースなどは、全て新品に交換しました。
バルブリフターは、SCP10用を組付けました。
バルブクリアランスを調整後に、新品カムシールを組付けて、カムシャフトを取付けます。
クランクスプロケットとカムスプロケットを組付けて、タイミングベルトを取り付けます。
タイミングベルトは強化品を使用しました。
ノーマルベルトでは、アクセルを踏み込んだ瞬間にベルトが伸びて、バルブタイミングが遅れてしまいます。
強化タイミングベルトでは、バルブタイミングの遅れが改善されるため、街乗りレベルでの加速でも体感できるほどの効果があります。
洗浄したカムカバーに新品ガスケットを組付けます。
カムカバー取付けナットの下側に取付く、タペットシーリングワッシャーも新品に交換します。
左右のカムカバーを取付けて、プラグカバーを取り付けます。
消耗が激しかったスパークプラグは、DENSOのイリジウムパワーに交換しました。
サージタンクやオルタネーターなどの、エンジン補機類を取り付けていきます。
インジェクターOリングとグロメットも全て新品に交換して組付けました。
インジェクターをデリバリパイプにセットして、シリンダヘッドへ取付けます。
エンジンハーネスやスロットルボディ その他、エンジンに取付く部品を全て取付けます。
取外したエンジンマウントは、経年劣化のためゴムに亀裂が入っている状態でしたので、新品に交換する予定でしたが、純正エンジンマウントは生産中止で手に入らず、社外品も存在してないようでしたのでワンオフで製作しました。
マウントブラケットは純正品を再使用するため、純正マウントを抜き取ります。
ワンオフ製作した強化エンジンマウントを、純正ブラケットへ圧入します。
画像は右側のエンジンマウントです。
完全に切れてしまっていた、フロント側のエンジンマウントもワンオフで製作しました。
純正マウントを抜き取って、強化エンジンマウントを圧入します。
リヤ側のエンジンマウントも、製作した強化エンジンマウントに交換しました。
左側のエンジンマウントも、純正マウントを抜取り、製作した強化エンジンマウントに交換しました。
前後・左右 4箇所の純正エンジンマウントを抜取り、全てワンオフ製作した強化エンジンマウントに交換。
これで、安心してエンジンを載せることができます。
オーバーホールしたエンジンを車両に取り付けます。
エンジンルームが狭いので、位置を微調整しながら慎重にエンジンマウントを仮止めします。
エンジンとミッションをドッキングして、4箇所全てのエンジンマウントを取付けて締付けます。
ドライブシャフトやサスペンションアーム その他、下廻りの部品を取り付けていきます。
エンジンルームから、エンジン上側に取付く、アクセルワイヤーやホース類を全て取付けていきます。
プラグコードは古かったので、NGKのパワーケーブルに交換して取り付けました。
エンジンオイル ミッションオイル LLCを規定量補充して、クランキングし、エンジンを始動。
オーバーホール後のエンジン始動では、ピストン組付時にシリンダーへ塗りつけたエンジンオイルが、燃焼して白煙がでてきます。
水温が上昇するまでエンジンをアイドリングさせ、サーモスタットが開いて、電動ファンが回るまでは冷却水のエア抜きをおこないます。
リフトから降ろす前には、ボルトの締め忘れや、油脂類の漏れがないかを入念に点検します。
ディストリビューターOリング交換
デイストリビューターからのオイル漏れが酷かったので修理しました
クランクプーリーの刻印が見えなかったのでカム側で圧縮上死点を合わせました
取外したデストリビューター
Oリングを交換します
洗浄してから新品Oリングを取付け
ポンチマークを合わせてエンジンに組付けます
フロントパイプ・マフラー交換
F/パイプのジャバラからの排気漏れで、すごい爆音になってました
マフラーもサビが酷かったので程度の良い中古に交換することにしました
マフラー出口
取外したF/パイプ
折れてました
ラジエターホース交換
ラジエターロワホースから冷却水が漏れてました
取外したロワホース
部品の供給が無かったので作りました
角度のついたラジエターホースと社外メーター用のジョイントの組合せ